入谷の秋祭り
美しい田んぼの景色に囲まれた南三陸町入谷地区。毎年9月半ばに250年の歴史を持つと云われる秋祭りが行われます。
祇園囃子の流れをくむと伝えられる優雅なお囃子と勇壮な獅子舞。
色鮮やかな衣装を身につけた子どもたちと獅子が入谷地区の黄金色に染められた景色の中をゆっくり、ゆっくり練り歩くのです。
入谷打囃子は、芸人と呼ばれる獅子舞、獅子あやし、笛、小太鼓、大太鼓のほか、先陣旗や神威を示す花飾りを持つ人たちで構成されています。
一行は入谷八幡神社へと向かい、到着すると五穀豊穣と家内安全を願い、獅子舞を奉納します。
その後、神輿を先頭にお旅所とよばれる「一本松」を目指して黄金色の田んぼの中を練り歩きます。
そして一本松に到着すると、そこでも入谷打囃子が奉納されます。
入谷打囃子の歴史
入谷八幡神社の例祭で行われる神輿渡御と打囃子による祭り行事で、打囃子は明和元年(1764年)が初奉納と云われています。
そのはじまりの謂れは・・・
入谷と登米の境界で、入谷の猟師がイノシシを捕まえた。
それを見ていた登米の猟師、
「そこはオラの村の領地だから、そのイノシシはおらほのものだ」
と言って持って行ってしまった。
入谷の猟師、
「それはおかしい、うちのものだ」
と代官所に訴え出た。
お裁きが出る間、入谷の漁師は争いの勝利を八幡神社に祈願し、「勝ったら、盛大なお囃子を奉納する」と誓った。
結果、入谷の猟師の主張が正当という裁定が出た。
誓いをを果たすため、時の肝入り山内甚之丞が京都に村人を派遣し、京都の祇園囃子を習わせ、奉納した。
そのお囃子が、「入谷打囃子」となる。
紡がれる伝統
地元の入谷小学校では、伝統芸能の継承として打囃子保存会の指導で、笛や太鼓の練習をし伝統芸能の継承に努めています。平成11年には宮城県の無形民俗文化財に指定されました。
子どもも大人も毎晩集まってお囃子の練習に励む姿、秋風をを背景に流れる笛や太鼓の調べ、黄金色の田んぼと花飾りの鮮やかなコントラスト。村人によって毎年繰り返され、大切に受け継がれてきたもの。数百年前もきっと、同じ光景が見られたのでしょう。
毎年9月、入谷地区には色濃い時間が流れます。